坂本小百合園長「勝浦ぞうの楽園」
映画『星になった少年』。
2年前に、小百合園長は、閉園になった阪神パークから、老ゾウのアキ子とキク子を引き取った。楽園に向けて、実際に一歩を踏み出したのだ。これには世の中の注目が集まった。
「ゾウは、年老いたり、動物園が閉園されたらいったいどうなるのだろう?」
「千葉に、ゾウの老人ホームを作ろうとしている人がいるらしい」
「千葉に、ゾウの老人ホームを作ろうとしている人がいるらしい」
哲夢くんの夢を小百合園長が形にした「ゾウの楽園構想」はマスコミで報道され、それをきっかけに昨春、2冊の本が出版された。さらに、哲夢くんの生涯を描いた映画『星になった少年』が今年7月に公開となる。
「この映画は実話を元にしていますが、あくまでも“物語”です。事実そのままではありません。でも、命の大切さ。動物に対する愛情。家族の愛。突然に愛する者を失った人たちの苦しみや悲しみ。そういったものが伝わる映画であれば、それは成功だと思います」
息子の死という最大の悲しみを乗り越えてきた小百合園長は、森の木漏れ日を受けて、華やかな笑顔で言葉を紡いだ。
「この映画によって、『ゾウのことをもっと知りたい、会ってみたい』と思う方が、『ゾウの幸せ』について考えてくださる方が、一人でも増えてくれたらと願っています。そうして、絶滅の危機にさらされているこの地上最大の生き物のために、皆さんの力が結集していく流れとなってくれたら……。それが、亡くなった息子の大きな願いでもあったわけですから」
ゾウの歩く道を、一緒に歩こう。
「勝浦ぞうの楽園」はせっかく人の手の入っていない山なのだから、森を切り崩すのは最小限にとどめたいと小百合園長は言う。木が倒れたら倒れたところに穴を掘り、ゾウが好きに歩いたところに獣道ができていく。それがこれまでの、そしてこれからの「楽園の作り方」だ。
人がやっていないことに挑戦していたら、こんな突飛な形になってしまって」と苦笑いしながら、小百合園長が、誰も前を歩いたことのない道を進んでいく。この道のまわりに広がる風景は、哲夢くんの描いた夢によく似ているはずだ。ゾウの足のおもむくままに、私たちもついていこう。それこそが、ゾウも人間も穏やかな気持ちで過ごせる、新しい楽園の姿だから。

