ワールド・エクスプローラー [world explorer] 世界を拓く人

「勝浦ぞうの楽園」坂本小百合園長

生まれ故郷のような環境を日本で。

小百合園長は、同じく千葉の市原で「市原ぞうの国」という動物園と、テレビや映画、イベントなどに動物を出演させるプロダクションを運営している。これまでにかかわったゾウは19頭。ゾウとのつきあいは、かれこれ20年以上におよぶ。
10年ほど前、小百合園長は60歳を超える老ゾウをひきとり、タイの保護センターに帰すという大プロジェクトを決行した。かねてから、自分が飼っているゾウたちには生まれ故郷で余生をゆっくり送らせてあげたいと考え、そのための資金を少しずつ貯めていたのだ。
ところが、一部地元のメディアからはバッシングが巻き起こった。「日本人は子ゾウを連れていって、いらなくなったら返してきた」と。
「ゾウを飛行機に乗せて無事に帰すには、大変な手間とお金がかかりました。この老ゾウの食費が先方の負担にならないように寄付もしたのです。だから、そんな風にとられて、本当に悔しい思いをしました」
「ならば日本で、できるだけ暖かくて、ゾウさんたちが故郷に近い環境で余生を送れるような場所を見つけよう、と決心したんです。それが、勝浦のこの土地でした」

森が、ゾウの心と体を癒してくれる。

13ヘクタールにおよぶ山と谷。わずかに杉林があるものの、ほとんどが原生林だ。青い空の下で、鮮やかな緑の木々を抱く斜面を歩いていると、まるでタイ北部の山の中にいるように思えてくる。頂上まで登れば真っ青な房総の海が目に入る。小百合園長が見つけたのは、まさに「ゾウのための楽園」となる土地だった。
「ゾウたちは朝と夕方、ゾウ使いと一緒に30分ぐらいのお散歩に出ます。ペレット(飼料)や草、果物などをあげていますが、散歩のときは、ゾウが好きなように歩いて、気に入った枝を折りとって食べています。このあたりは常緑の木が多く、ススキも自生しますので、山全体がゾウの餌みたいなものですね」
これまで病気をしたことのなかったアジアゾウのアキ子は、昨夏、猛暑でお腹を壊した。2日間は散歩を控え、3日後に外へ出してみた。すると、食欲がなかったはずのアキ子は、冬のために乾燥させておく枝を積み重ねた山から、茶色い葉ばかりを選んでもりもりと食べた。
ここでアキ子たちが暮らし始めて一年が経つ。小百合園長は、ゾウたちが自分で自分の体を癒していく光景を見るうちに、自然の環境が彼らの体にどれほど大切なものであるかをあらためて実感した。
すぐ脇の木々から、ウグイスの美しい声が響いた。このあたりの山にはイノシシやサルなど大型の哺乳類も数多く暮らしている。付近の動物園から放されて野生化したキョンの群れもいるという。遠くでシカが騒がしく鳴く声が聞こえてくる。
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