坂本小百合園長「勝浦ぞうの楽園」
「幼いころから、これまで人がやっていないことに挑戦するのが好きだった」と、坂本小百合さんは、誰も歩いたことのない道を切り拓いてきた。ゾウを擁する動物プロダクション、ゾウに乗れる動物園――。夢を次々と現実のものに変えた彼女の今の夢は「ゾウのための楽園」。小百合園長の案内で、ゾウと一緒に楽園を歩いた。
取材・文:江口絵理
道がゆるやかな曲線を描き、カーブの先に高台が現れる。その上に見えるのは、高々と鼻をかかげたゾウだ。まわりには柵も堀も見当たらない。あわてて目をこすり、しばし凝視してやっと、そのゾウが動かないことに気づく。
今にも歩き出しそうな石のゾウが、訪れる人を出迎えている。ここは、オープンを間近に控えた、千葉は房総の「勝浦ぞうの楽園」。芝が生えそろい始めたアプローチを抜けて中へ向かうと、太平洋を臨む山々を覆った、深い森が広がった。
入ってすぐのエントランスに、今度は本物のゾウが2頭。ゆったりとした柵に囲われた運動場から、見慣れぬ客を興味深げに眺めている。小百合園長が2頭に近づき、「おはよう」とそれぞれに声をかけて、鼻をぽんぽんと軽く手でたたく。
「こちらのアキ子は今年56歳になる、タイ生まれのアジアゾウです。神戸にある阪神パークで50年以上を過ごして、私たちのところに来ました。向こうのサンディはアフリカゾウです。9年前に引きとりました。もうすぐ20歳で、普通ならこの倍ぐらいの体格でもいいはずなんですが、小さいときの栄養障害なのか、小柄なままなんです」
ゾウが休息するための場所。
マテバシイの木が生い茂る森の奥へ、2頭のゾウと小百合園長はゆっくりと歩いていく。水浴びが好きなアジアゾウのために、雨水の流れをせきとめて作った大きな池の脇を通ると、競うように鳴き交わすカエルの声が聞こえる。
「勝浦ぞうの楽園」は、ゾウが静養するための場所だ。動物園の閉園などによって行き場がなくなったゾウ、年老いてリタイアするゾウ、病気やストレスから休養を必要としているゾウが安心して過ごせる土地を、と願い続けてきた小百合園長の構想が実現したものだ。
「ここはまず第一に、ゾウがより自然体で生活できる場所、ゾウがリフレッシュするための場所です。ゾウ舎の建替などでゾウを一時預かるための施設としても役立つでしょうし、将来的には繁殖のセンターになってほしいと思っています」

坂本小百合園長とアジアゾウのアキコ

タイから取り寄せた石のゾウ。一本一本の皺をタイのゾウ使いが刻んだ。

人がゆうに通りぬけられる程ゆったりとした柵の中で、ゾウ使いに見守られながらくつろぐゾウさんたち。

この山にはモリアオガエルも生息する。地域によっては天然記念物に指定されている珍しいカエルだ。
