ワールド・エクスプローラー [world explorer] 世界を拓く人

小林武史さん「ap bank」

自分も学べて、それを社会に返していくところから始めなきゃいけないと思ったん です。

----- 同時に、日本人はそういったアーティストの社会活動に過敏というか、慣れていないところもありますね。
小林 そうなんです。皮膚感覚が発達しているんでしょうね。それでいて本質的な論議となると「いろいろ事情もあるだろうから」とかなんとか言って、人任せになる。清濁を受け入れたり、真実を汲み取ったりする能力は高いけれど、じゃあどうするか?となると、とても保守的なんですね。
でもまあ、僕も偉そうなことは言えなくて、ボブ・ディランの歌じゃないけど、かつては「人生なんて"like a rolling stone"だ」と思ってた人間だったんです(苦笑)。快楽主義で、世界が終る日が来ても自業自得なんだと思ってましたから(笑)。
----- そんなにワイルドだったんですか。今日の小林さんからは想像もつかないですね。
小林 まあ、一方では音楽を通じて気持ちを通わせたり、大切な人と出会ったりということも体験してきてますから、鈍感というわけではなかったと思うんです。
ただ、ちょうどこの数年間で、いろんなことのタイミングが合ってきたのは感じてました。「9・11」もそのひとつですし。9・11のちょっと前まで、仕事でニューヨークに暮らしてたんです。アメリカは音楽的に多大な影響を受けた国なので、1度は内側から見てみたかったんですよ。それが期待と真逆というか、ああいう方向にいってしまって。
一方、日本の方も、右肩上がりの経済は完全に終わったし、もはや学歴も通用しない。今までのシステムが壊れて、生きる意味も混乱してきてる。そういうなかで、自分と世界との繋がりであるとか、とにかくいろんなことを勉強したいという気持ちが高まっていったんです。
----- 先程の「突き詰めたうえでのap bank」には、そういった気持ちの流れも含まれているんですね。
ところで「継続して取り組む」ために融資という形を選択なさったのは、どんな理由からですか? それもap bankの場合は、たとえば環境系の市民バンクとして有名な「未来バンク」のように外側から出資を募るのではなく、小林さん、櫻井さん、坂本さんが自腹を切っての融資ですよね。ある取材で櫻井さんが「音楽でたくさんお金を儲けることに罪悪感を覚えていた」とおっしゃっていたのが印象的だったんですが。
小林 僕はがんばった結果だと思っているので、櫻井君が思っているような罪悪感というのはないですが、同時に、いかに相続税をくぐり抜けようかとか、誰もできないほど贅沢三昧をしようなんてことにも興味がないんですよ。
と同時に、未来のことを真剣に考えていくと、富と権力に根ざしたものの考え方や構造が世の中を歪めているんだというところに、どうしても行き着くんです。そんなときにたまたま、ある企業の会長が自社株を売って社会貢献を目的にした施設をつくったという話を知って、そんな生き方もあるんだなと。僕も自由に使えるお金があるなら、いろんな人とつながったり何かを学んだりという方向に使うほうが、絶対に面白そうだと思ったんです。
----- ある意味、小林さんの融資には自己投資の側面もあると。
小林 まったくそうです。自分も学べて、それを社会に返していくところから始めなきゃいけないと思ったんですよ。
まあ、融資となれば返ってこないリスクはありますが、もし返ってこなくても路頭に迷うわけじゃないし、誰かに迷惑をかけることもない。これぐらいの規模だったら自己責任でやれると思えたのが最終的な決断でしたね。で、やってみたら、やっぱり面白かったんです。
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