ワールド・エクスプローラー [world explorer] 世界を拓く人

小林武史さん「ap bank」

環境のために一芸で貢献するというのは、非常に難しい

メジャー・フィールドの第一線で数々のアーティストを手がける音楽プロデューサーの小林武史さんが、Mr.Childrenの櫻井和寿さんと共に、環境をテーマにした市民バンク 「ap bank」 を設立されました。ミュージシャンが斬新な環境支援事業を立ち上げた、その理由とは?
インタビュー:河野アミ
----- 今日は音楽取材ではなく、小林さんとMr.Childrenの櫻井和寿さんが設立された「ap bank」についておうかがいできるんですよね。新鮮なので楽しみにしていました。
まず最初に、小林さんが環境問題に関心を持たれたきっかけを教えていただけますか? 櫻井さんはどこかの取材で「より意識的になったのは子供が生まれてから」とおっしゃっていましたが。
小林武史氏(以下、敬称略) 僕の場合は子供のこともありますが、もともと食べることが好きなので、食材が気になるっていうのがずいぶん以前からあったんです。美味しいものを食べさせてくれるレストランが、実は契約農家の有機農法による野菜を使っていたことがわかったり。
もちろん食べものだけじゃなく、音楽でもなんでも、物事の本質まで迫っていきたいほうなんです。環境ということでも、食べものから始まって、子供たちの未来も考えるようになり…というのがスタートですね。ゴミの分別もやるようになりましたから(笑)。まあ、それも10年くらい前からですけど。
----- それがここにきて具体的な活動へとつながった背景には「Artists' Power」の存在があると聞いています。Artists' Powerとはもともと、ap bankの出資者のおひとりである坂本龍一さんを中心とした、自然エネルギーの活用促進プロジェクトですね。
小林 そうです。流れとしては、坂本さんから「環境関係のことで話しませんか」と連絡をもらったのがきっかけで、Artists' Powerに参加するようになったんです。そこでいろいろと学ぶうちに深みにはまり、自分自身と向き合ったり、いろんな人たちと出会ったり…と、いくつかの条件が整ったときにap bankを思いついた感じですね。そこにいたるまで、坂本さんの呼び掛けから1年半ぐらいの時間を経ていましたし、僕としては相当に突き詰めたうえでのap bankという気持ちでした。
----- なるほど。たとえば環境をテーマにしたチャリティー・イベントやキャンペーンといった方向にいかなかったのはなぜですか?
小林 たしかに当初はArtists' Power全体に、坂本さんの「地雷ZEROキャンペーン」の成功を踏まえての「じゃあ次は環境系でイベントを」という流れはあったと思うんです。僕自身も「Act Against Aids」のチャリティーで、桑田佳祐&MR.CHILDRENの「奇跡の地球」という曲をプロデュースしましたし、何か問題を解決させるために音楽で何かを…というのが必要な場合もあるとは思います。
でも環境のことっていうのは、バランスの問題なんですよね。未来をイメージして現状のバランスをどうとるか。だから継続していかなくちゃ意味がないんです。たとえば原子力ひとつとっても、一概に原子力だけを悪者にしていいのか、ほかの発電の現状はどうだろう?と、つねに考え続けなきゃいけない。
そうなると、アーティストが環境のために一芸で貢献するというのは、非常に難しいことだと思うんです。
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