ワールド・エクスプローラー [world explorer] 世界を拓く人

養老孟司先生「ひとと動物のかかわり研究会」

もともと生き物というのは自然のなかに住んでいるわけです

----- そうですね。ただ愛犬の腕白ぶりはOKでも、アライグマやイノシシなど野生動物の都市におけるやんちゃは受け入れづらいのが人間社会の本音だと思うんです。じゃあ捕殺するのかというと、それも認め難いとなるわけですが。そうなってくると、さらに大きな視点で「動物との共生」を考えなくてはならないですね。
養老 このあいだ兵庫の豊岡に行ったんですけど、コウノトリが140羽を超えて、来年は野生につがいを戻すって言ってたんですよ。繁殖が成功したから元に戻すと。それに際して、県が自ら動いてるんです。
かなり大きな谷に実験用の田んぼをつくって、無農薬にして、そこをコウノトリの住処にしようって算段なんです。ああいう錦の御旗みたいなものがあると環境全体を扱うのがやさしくなるんですよね。それをほかの場所でも上手にできないかなと思いますね。「うちはタヌキの里」とか「うちはサギの里」とか。日本中の詐欺師が集まるわけじゃないけど(笑)。
そうやってひとつの野生動物を保護しようと思うと、とたんに生態系全体について考えざるを得ないってことが、よくわかってくるんです。1カ所を直してもダメだってことが。
たとえば日本のコウノトリはドジョウを食ったりするでしょ?だからいつでもドジョウがいるような環境にしようと思うと、昔のような田んぼに戻すしかないんですよ。農薬を使ったらいっぺんに死んで流れちゃいますしね。そうすると農薬を使わない農業をするしかないってことになって、万事がそういうふうに循環で動いていきますからね。いいほうに。
----- 現状を考えると、やや気が遠くなる作業ですね。
養老 いや、そんなことないですよ。それを気が遠くなると思うのは、さっき言った、ロボットにやらせる思考ですよ。そういう人は余計なことをしないで家に籠ってテレビゲームでもやっててください(笑)。動物を飼おうとか余計なこと考えないほうがいい(笑)。
----- ごもっともです。ところでその「ドジョウがいる田んぼ」こそが、先生がシンポジウムなどでおっしゃっている「里山」の生きた姿なわけですね。人間と動物がうまく共生していくための舞台といいますか。
養老 もともと生き物というのは自然のなかに住んでいるわけです。自然の典型としては日本でいうと屋久島であるとか白神山地あたりですね。それに対して東京の天王洲とか、横浜でいえばみなとみらいなんかが人間がつくる世界、「人工」といってもいい。そして、それらの中間にあるのが「里山」と呼ばれるものです。
これはもともとそこにある自然を利用しながらちゃんと手入れもするわけです。犬だけでなく馬とか牛なんかのいわゆる家畜との関係も「里山」とよく似た状況なんですね。利用と共生が一緒になっている。この50年くらいで状況が崩れてきましたけど、これをある安定したところまで何とかもってこれないかというのが僕が考えていることなんです。
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