養老孟司先生「ひとと動物のかかわり研究会」
大事なことは、相手の自主性を認めるってことなんです
北里大学大学院の教授であり、「バカの壁」をはじめ多くの著作で知られる養老孟司先生が理事長を務められる「ひとと動物のかかわり研究会」が、このたびNPO法人として認証されました。そこで今回は研究会の名称をテーマにいただき、この地球上で共に暮らしているさまざまな動物と私たちとの関わり、人と動物との共生について養老先生におうかがいしたいと思います。
インタビュー:河野アミ
----- 今日は養老先生に「人は動物とどう関わっていけばよいか」を考えるためのヒントをいただければと思っています。
というのも、若い世代、特に都市生活者のなかには「動物」という存在をどう扱っていいのかわからない人が確実に増えています。極端にいえば犬や猫といったペット動物以外の知識がほとんどない。さらにペットとの関係においても虐待と呼ばれる状況から、ペットを失った悲しみからなかなか立ち直れない「ペットロス」まで、数十年前にはなかった問題が生まれています。
かつては身近だった馬や牛、昆虫などさまざまな動物たちとのつながりを失ったことで、我々は犬や猫とも上手に距離がとれなくなっている気がするのですが、いかがでしょうか。
というのも、若い世代、特に都市生活者のなかには「動物」という存在をどう扱っていいのかわからない人が確実に増えています。極端にいえば犬や猫といったペット動物以外の知識がほとんどない。さらにペットとの関係においても虐待と呼ばれる状況から、ペットを失った悲しみからなかなか立ち直れない「ペットロス」まで、数十年前にはなかった問題が生まれています。
かつては身近だった馬や牛、昆虫などさまざまな動物たちとのつながりを失ったことで、我々は犬や猫とも上手に距離がとれなくなっている気がするのですが、いかがでしょうか。
養老先生(以下、敬称略) そもそもペットを飼う人が増えたのは、人間の側にはっきりとした社会的役割がなくなってきたことが大きな理由なんですね。人間がいなくてもいろんな物事が上手に動いちゃう、という問題があるんです。古い言葉ではオートメーション、今はロボット化って言いますけど、世のなかがロボット化すればするほど人間の手が空いてくるわけです。
何が言いたいかというと、ロボット化してきたから若い人がヒマになったという話じゃないんです。作業をロボット化するという考え方そのものが、社会のあらゆるところで問題を引き起こしてるはずなんですよ。チャップリンの映画のなかに機械に遊ばれちゃうっていうのが出てきますけど、今や意識的な作業以外はロボットのほうが人間よりいいってことになって、作業が機械にどんどん置き換えられていってますから、人間のほうは生きてくことの必然性が欠けてきたんですね。だから生きがいがどうのとか、いろんな問題も起こってきた。
それを置き換えるためのひとつがペットでね。昔は生活の一部として番犬だの馬だのをごく普通に飼っていたのが、今度は家のなかに飼ってわざわざ面倒をみてる。
何が言いたいかというと、ロボット化してきたから若い人がヒマになったという話じゃないんです。作業をロボット化するという考え方そのものが、社会のあらゆるところで問題を引き起こしてるはずなんですよ。チャップリンの映画のなかに機械に遊ばれちゃうっていうのが出てきますけど、今や意識的な作業以外はロボットのほうが人間よりいいってことになって、作業が機械にどんどん置き換えられていってますから、人間のほうは生きてくことの必然性が欠けてきたんですね。だから生きがいがどうのとか、いろんな問題も起こってきた。
それを置き換えるためのひとつがペットでね。昔は生活の一部として番犬だの馬だのをごく普通に飼っていたのが、今度は家のなかに飼ってわざわざ面倒をみてる。
----- たしかにペットの世話に生きがいを感じている人は少なくないようですね。以前は考えられなかった「ペットと同居できるマンション」やペット用の洋服なども今ではポピュラーですし、生活そのものがペット中心という人も珍しくありません。
またそれとは別に、いざ飼ってみると自分の生活環境とペットの習性がかみ合わなくて、しつけに四苦八苦するという話もよく聞きます。
またそれとは別に、いざ飼ってみると自分の生活環境とペットの習性がかみ合わなくて、しつけに四苦八苦するという話もよく聞きます。
養老 一緒に暮らすなかでひじょうに大事なことは、相手の自主性を認めるってことなんですよ。相手が別の世界に生きていることを、まず受け入れる。だから犬や猫がトイレ以外の場所で用を足したって、怒ってもしょうがないんです。
じゃあどこまで認めるかというと、その本性に合ったように認めてやることなんですね。犬は犬なんだと。バカにしてるんじゃないですよ。犬は犬っていうのが犬の本性を認めるということだから。
それで犬がハッピーかと追求されると困るけど、そこはなかなか難しいところでね。相手の本当の気持ちなんてそう簡単にはわからない。結婚したことのある人ならわかると思うけど、人間でも同じですからね(笑)。相手を認めながら、お互いに理解を深めていくしかないんですよ。
じゃあどこまで認めるかというと、その本性に合ったように認めてやることなんですね。犬は犬なんだと。バカにしてるんじゃないですよ。犬は犬っていうのが犬の本性を認めるということだから。
それで犬がハッピーかと追求されると困るけど、そこはなかなか難しいところでね。相手の本当の気持ちなんてそう簡単にはわからない。結婚したことのある人ならわかると思うけど、人間でも同じですからね(笑)。相手を認めながら、お互いに理解を深めていくしかないんですよ。

