ディスカバリー・モーメント discovery moment

山根一眞氏

Q1.ひらめいた瞬間について

私たちが直面している多くの問題は、「愛の欠如」が原因の一つなんじゃないかとひらめきました。

そのひらめきのきっかけは、新型インフルエンザウイルスです。このところ、このウイルスは何かというテーマに没頭しているんですが、なぜ、このウイルスが急に強い感染力を備えて暴れ出したのかは、誰も説明してくれない。

何かが起きたとき、それには必ず明確な「原因」がある、それを必ず見つけよう、というのが僕の信念です。「原因不明」という結論が出るのは、ちゃんと調べていない、ちゃんと考えていない結果なんです。そういう「原因」を解き明かすことが、僕がずっと続けてきた仕事だと思っています。

で、新型インフルエンザですが、このウイルスが猛威を振るいだしたのは、必ずや彼らの側に何らかの「事情」、人間であれば「意志」に相当するものがあるはず。そこで、自分がウイルスになって考えてみたんです。

そこで感じたのは、ウイルスたちは、何らかの環境異変で安住の場を失いつつあるのではないか、彼らは絶滅の危機を感じ始めているのではないか……という「彼らの側の事情」でした。インフルエンザウイルスの権威、根路銘 国昭(ねろめ くにあき)さんも、そういうことをおっしゃっていました。

ウイルスの例はちょっと極端ですが、人間世界では、相手の立場、相手の気持ちになって考えてみる姿勢は、望ましい人間関係に欠かせないことですよね。相手の立場で相手の気持ちをよりよく知ろうとする姿勢を、人間関係では「思いやり」、そして「愛」と呼んできましたから。男女の愛は、まさにそれによって培われていくものですし。

金融危機は、自分だけがカネを儲ければいいというエゴイズムが原因です。環境問題は、自然や他の生命のことを考えなかった人類のエゴイズムの結果です。いずれも、「自分以外の者へのあたたかな思い」が欠けていたことで起こった破綻です。

金融危機も環境問題も、つまりは人にとって最も大事な「愛」の欠如に原因がある。ひらめきって、こういう風に連鎖的に考えが拡大していっちゃいますね。

Q2.過去に戻れたら会いたい人は?

40億年前の地球に行って、地球最初の生命である「超好熱性微生物」に会いたいです。

僕は世界No.1の深海調査船、「しんかい6500」に搭乗し、1500mの海底、320度もの熱水が海底から出ている「熱水噴出孔」に行ってきたんですが、そこには不思議なエビや貝がメチャ群れていました。その生物たちが餌にしているのが、100度以上の高熱環境でもへっちゃらな「超好熱性微生物」なんです。

その微生物、DNAの解析から40億年前の地球最初の生命はまさにこれだったことがわかってきたんです。すごい話でしょう?

Q3.100年後の世界に行けたら?

深海底の極限環境で生命を営んでいる生物たちは地球の原始生命です。その微生物たちは、実は火星から隕石に乗って地球へ飛来したというおとぎ話のような学説が有力になっています。私を含めたあらゆる生命は、地球だけで生まれ、進化してきたのではない、地球生命は宇宙生命なのだという物語には、わくわくします。

そこで、100年後には実現しているはずの火星行き宇宙船に乗り、片道でいいので(笑)、火星へ行きたい。地球生命の故郷を見てくる里帰りの旅、ね。

Q4.ディスカバリーの番組で印象に残っているものは?

ディスカバリーチャンネルとアニマルプラネットは常に観ているので、印象に残った番組は何百とありますが、最近では「火星探査機フェニックス」がよかったなぁ。1999年に一度失敗した火星探査ミッションが、再挑戦するドキュメンタリーです。

少ない予算の中で火星探査チームは、NASAのあちこちから古い機器や部品を集めて新たな探査機を作り、打ち上げた。フェニックスという名の通り、不死鳥のように探査機を蘇らせたんです。フェニックスは火星に着陸し、水の痕跡を初めて発見した。水は生命の存在を証明する第一条件で、ミッションの主目的はそれを探すことでした。その大成果が得られたんです。

僕が深海で見てきた地球の原始生命の世界と、フェニックスのミッションはつながっているんです。この番組はまさに、我々の生命のルーツを宇宙に探る挑戦を感動的に描いた、すばらしいドキュメンタリーでした。

DiscoveryPeopleでも山根一眞氏のインタビューをWeb限定のコンテンツとしてご紹介しています。

Discovery Moment(ディスカバリー・モーメント)とは

誰でも経験する発見やひらめきの瞬間。ディスカバリー・モーメントではさまざまな分野で活躍する著名人に、発見やひらめきの瞬間について語ってもらいます。

大きな発見から小さなひらめきまで、そのスケールは様々です。しかしそこから何かが生まれ、何かが変わり、それが人生の転機となることもあるのです。著名人たちの「その瞬間」からあなたも生きるヒントをもらえるかもしれません。

そのほかにも「過去にさかのぼって会いたい人」、「未来に行ってしたいこと」など著名人たちの想像力と個性溢れる回答をお楽しみください。

プロフィール

山根一眞(やまね・かずま)

1947年生まれ。ノンフィクション作家として、アマゾンから深海まで、地球上のあらゆるところへ取材に出かける。日本のモノづくりを支える技術者たちを「メタルカラー」と命名、彼らとの週刊誌での対談は17年もの長期にわたって続き、多くの反響を呼んだ。著書に『環業革命』ほか多数。日経ビジネス誌連載「メード・イン・ジャパン メタルカラーの輝き、再び」ほか、雑誌・webでの連載多数。2009年4月より獨協大学特任教授。

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